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矛盾いついて(その113) ブログトップ

11月19日(金) [矛盾いついて(その113)]

 こんな場面を考えてみましょう。太郎と次郎の二人がいるのに、椅子は一つしかありません。そのときどこかから「太郎にも次郎にもひとしく椅子がある」と聞こえてきたとします。これが事実を記述しているとすれば明らかに矛盾していますが、そうではなく、これは「太郎にも次郎にも椅子に座らせてあげたい」と言っているのです。つまり「事実の記述」ではなく「意思の表明」です。しかし実際には椅子が一つしかないのですから、それを聞いた太郎も次郎も「そんなことを言っても、どっちか一方しか座れないじゃないか」と抗弁することでしょう。このことばにはその意味で(広義の)矛盾が孕まれているのです。
 ここで考えてみたいのは、もし「太郎にも次郎にもひとしく椅子がある」という声が聞こえなかった場合のことです。一つしかない椅子を巡って太郎と次郎が争い、力の強い太郎が確保したとしましょう。あぶれた次郎は「何でオレがあぶれなきゃいけないんだ」と嘆くことでしょうが、そのとき「じゃあ、太郎があぶれればいいのか」と思うことはありません。「太郎にも次郎にもひとしく椅子がある」とは聞こえてこないのですから。次郎はいつまでも「何でオレが」の嘆きに閉じ込められたままです。一方、首尾よく椅子を確保した太郎も、「オレは次郎の椅子を奪ったのだ」とは思いません。「太郎にも次郎にもひとしく椅子がある」という声がしないのですから。
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