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矛盾について(その170) ブログトップ

1月15日(土) [矛盾について(その170)]

 源信の『往生要集』には八つの地獄の恐ろしい情景が描かれていますが、それらがどれほどこの世の穏やかな情景からかけ離れたものであるにしても、そのパーツ一つひとつはこの世から持ち込まれています。それらのありふれたパーツが極端な形で組み合わされて恐ろしい地獄の様相が出来上がるのです。
 さてしかし、こんなふうにこの世の外を設定した途端に、そこもこの世の内部に回収されてしまいます。この世の外であったはずの世界が内に取り込まれてしまうのです。源信が描いてくれる第一の地獄は等活地獄と言い、ぼくらが住んでいるこの世界の地下深く(一千由旬と書かれていまして、まあ途方もなく深いのでしょう)にあるとされ、さらにその下には黒縄地獄、さらにその下に…という具合です。
 これはマルコポーロが中国の東方の海上にジパングという黄金の国があると想像したのと似ています。まだ行ったことはないが東の海の中には何やらそんな珍しい国があるそうなと思いを膨らませるのと同じように、行って見てきたわけではないが悪いことをして死んだ人はそんな恐ろしげな地下の世界に落とされるのだそうなと思いを巡らしているのです。そうすることでこれまでの世界を拡大しているのです。見て知っている世界にまだ見ぬ世界まで取り込んで拡げているのです。この世から外に出ているのではなく、この世に想像上のあの世を取り込んで世界を拡げているのです。
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